都内でも指折りのお嬢様校への入学が決まった時、私より喜んだのは母だった。朝はまずお花の水やり。旧校舎への渡り廊下を抜け、礼拝堂でお祈り。金木犀の香りに包まれながら授業を受け、級友たちと夕方まで部活。男子禁制の学び舎で恋愛話に夢中になって、‘いつか私も恋とかしちゃうのかな’なんて夢見ながら帰宅する…。それが私の学校生活、私のすべてだった。壊れたのは2カ月ほどまえ。順調だった父の事業が大きな損失を抱えたのだ。すべてを立て直すには生活レベルの見直しが必要だったが、住んでる場所も、ハイブランドの衣服も、何一つ諦められない母がそれを許さなかった。ある日、会社の経営者だと名乗るオジサンを母に紹介された。「スズカの初めてをね、この人が高く買ってくれるって」 私はそのとき母になんて答えたのか覚えていない。覚えているのはたくさん泣いたことと、オジサンの歪んだ笑顔と、下半身の鈍い痛みだけ。それから母は父に内緒で色んな男の人を連れてきては、お金と引き換えに私を抱かせた。どれだけ私が嫌がっても、家族のためだ、私のためだと、怒鳴られた。今日もまた知らない場所に連れていかれる。私にできることはもう、早く時が過ぎ去るように目を閉じて祈ることだけだった――。虚栄心に囚われた母の呪縛から逃れられない…健気で哀れな少女のおはなし。
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